3PL(サードパーティー・ロジスティクス)とは?物流外部委託のメリット・デメリットを紹介
年々、様々な背景から企業に求められる物流レベルは高まりつつあります。そのため、自社の物流機能を外部の企業に委託する物流アウトソーシングが普及するようになりました。そこで良く耳にするのが3PLという言葉。本日は3PLについて詳しく解説いたします。
目次
3PLとは?
3PLとはサードパーティー・ロジスティクス(Third Party Logistics)の略語であり、Thirdは3rdとも表記されます。日本では「サンピーエル」や「スリーピーエル」という呼び方で親しまれています。簡単に言えば、物流サービスを一つの商品として提供するビジネスモデルのことです。ファーストパーティーが売り手であるメーカー、セカンドパーティーが買い手である卸や小売とした場合、その物流機能を担う第三者がここでいう「サードパーティー」となります。
物流は「モノ」を扱う企業にとって経営上の重要な要素であり、単なるコストセンターではなく、競争力を左右する戦略的な分野とされています。輸送や保管をはじめ、荷役、包装、流通加工、情報管理といった6つの主要な機能が複雑に絡み合う物流業務は、専門性が高く効率的な運営が求められます。以前の記事「物流とは?目的やメリットなど基礎知識から徹底解説いたします」でも説明していますが、3PLは、外部の専門会社に委託することにより、企業は自社リソースをより重要な分野に集中させることが可能になります。
物流機能を受託する3PL事業者の役割は多岐にわたります。単なる輸送や保管の代行だけでなく、物流システムの設計や改善提案を通じて、企業全体の効率化をサポートすることが期待されています。例えば、需要予測や配送ルートの最適化、在庫配置の見直しなど、サプライチェーン全体を視野に入れた提案が可能です。このように3PL事業者は、企業の物流業務を単なる外部委託ではなく、経営戦略の一環として位置付けるパートナーとなります。
また、国土交通省は「荷主に対して、物流改革を提案し、包括して物流業務を受託する新しいサービス」として3PLの概念を明確に位置付けています(総合物流施策大綱より)。これにより、物流業務の外部委託が企業の競争力を高めるための戦略的選択であることが強調されています。
物流サービスの進化の背景
もともと、輸送を手配するフォワーダーやブローカーといった存在が物流業界における第三者としての役割を果たしていました。しかし、1990年代のアメリカではこれらの第三者が、単なる輸送や保管にとどまらない複合的なサービスの提供を始め、物流の専門性が進化しました。例えば、在庫管理や多国間輸送、さらには顧客のオーダー管理といった分野に踏み込み、企業のサプライチェーン全体を支える存在へと進化しました。この動きはやがて日本にも波及し、現在の物流サービスが確立されたと考えられます。
現代における物流業務は、従来の「運ぶ」「保管する」という基本機能を超え、IT技術の活用や、エコロジカルな観点を取り入れた付加価値の高いサービスに進化しています。このような取り組みが企業活動を支える基盤としての物流の重要性をさらに高めています。
3PLが求められている背景
物流が外部委託される背景には、経済のグローバル化が大きく関わっています。グローバル市場では、競争が激化する中で、企業は限られた経営資源(ヒト・カネ・モノ)を最も重要な領域、すなわちコア・コンピタンス(Core Competence: 中核的能力)に集中投下する必要があります。この結果、付加価値の高い部門への資源配分が優先され、付加価値が相対的に低い部門、特に物流部門は外部に委託するケースが増えています。
例えば、メーカーがグローバル市場で競争力を保つためには、製品価値の向上に注力することが求められます。そのため、開発や生産部門への投資が優先され、物流などのサポート機能はアウトソーシングの対象となることが一般的です。さらに、物流の管理・運営は高い専門性を必要とし、自社で対応する場合、非効率的な運営がコスト増を招く可能性が高まります。加えて、多くの企業が物流部門を「コストセンター」と認識しているため、コスト削減の観点からも外部委託が選択されやすい状況にあります。
一方で、近年は顧客中心の経営(顧客ファースト)が浸透してきています。これにより、単なるコスト削減を目的とした物流運営ではなく、顧客満足度の向上を実現するための戦略的な物流管理が求められています。物流が商品やサービスの競争力を左右する要因と捉えられるようになり、高品質な配送サービスや迅速な納品対応などが顧客体験の重要な一部を占めています。
このような状況下、物流の高度な運営ノウハウや最新技術を有する専門企業が、企業の物流パートナーとして重宝されるようになっています。彼らは物流業務を単なるオペレーションの委託先ではなく、経営戦略を支える基盤として捉え、効率的かつ顧客満足度の向上に寄与するサービスを提供しています。その結果、物流業務のアウトソーシングは、企業の競争力を強化するための不可欠な選択肢となりつつあります。
さらに、環境配慮型物流や、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった社会的要請にも対応可能な外部委託先の価値が注目され、物流外部委託の重要性はますます高まっています。これらの要因が重なり、専門企業による物流サービスの需要が今後も拡大していくことが予想されます。
数字で見る3PLの市場規模
上記を裏付けるように実際に3PLの市場は拡大しています。以下は平成20年3月の国土交通省の調査報告です。
平成 18 年度における3PL事業の市場規模は約1兆 5,315 億円(物流部門売上高に占めるシェア 8.7%)と推計される。また、平成 23 年度における3PL事業の市場規模は約 2 兆 2,314 億円(同シェア 11.2%)と5年間で 45.7%の伸び率となり、物流業全体の市場規模の伸び(同 13.2%)を大きく上回る。
3PLの種類
アセット型
アセット型とは、自社が保有する施設や設備、車両、情報システムなどの資産(アセット)を活用して物流サービスを提供する形態を指します。このモデルでは、倉庫、配送トラック、在庫管理システム(WMS)や輸送管理システム(TMS)といったインフラを自社で所有・運営し、顧客のニーズに応じたサービスを展開します。
この形態のメリットは、業者が自社の設備を直接管理しているため、運用における柔軟性や安定性が高い点です。例えば、急な配送依頼や特別な保管条件が必要なケースでも迅速に対応することが可能です。また、資産を活用することで長期的にコスト競争力を持つことができます。
ただし、施設や設備の維持費が高く、運営に必要な初期投資が膨大である点はデメリットとなる可能性があります。また、資産を有効活用するために一定量の業務が必要なため、顧客規模や案件内容によっては柔軟性が制限される場合もあります。
ノンアセット型
ノンアセット型とは、自社では物流資産を保有せず、他社の資産や設備を利用してサービスを提供する形態を指します。このモデルでは、物流ノウハウや専門知識(ナレッジ)を強みとし、顧客企業に対してコンサルティングや運営支援を行います。このため、別名「ナレッジベース型」と呼ばれることもあります。
ノンアセット型の特徴は、自社で資産を持たないため設備維持や運用に伴う固定費が発生せず、経営の柔軟性が高い点です。これにより、多様な顧客ニーズに対応しやすく、必要に応じて最適な外部パートナーを組み合わせることで、効率的な物流ソリューションを提供できます。
例えば、特定の地域での配送業務を地元の運送業者に委託したり、繁忙期には追加の倉庫スペースを短期間で確保するなど、リソースの調整が容易です。また、顧客企業の物流戦略やシステム導入のサポートに特化することで、付加価値の高いサービスを提供できる点も強みです。
一方、資産を所有しないため、物流ネットワークの構築に時間がかかる場合や、外部パートナーの品質に依存するリスクがある点は留意が必要です。そのため、適切なパートナー選定と協力体制の構築が成功の鍵となります。
3PLのメリット・デメリット
3PLには、物流業務の効率化や品質向上といった大きな利点がある一方で、いくつかの課題も存在します。以下に、それぞれのポイントを詳しく解説します。
メリット
まず注目されるメリットとして、物流品質の向上が挙げられます。3PL事業者は輸送、保管、荷役、包装、流通加工、情報管理など、物流の主要機能において専門知識と経験を有しています。この専門性に基づいた運営により、荷主企業の物流品質を顧客が満足するレベルに引き上げることが可能です。結果として、企業のブランド価値向上や、リピート顧客の獲得につながります。
次に、リードタイムの短縮も3PLの大きな利点です。近年では、顧客から「翌日配送」や「当日配送」といった迅速な対応が求められることが当たり前となっています。このような高度な物流体制を整えるには、大規模な設備投資や熟練した人材の配置が必要です。3PL事業者はこうしたインフラを既に構築しており、荷主企業はその恩恵を受けることができます。
さらに、コスト削減も3PLを活用する大きな理由の一つです。物流の専門企業に委託することで、在庫管理の最適化、輸送ルートの効率化、設備投資の削減といった効果が期待できます。例えば、配送センターの稼働率向上や輸送コストの抑制など、3PLの運営ノウハウを活用することで、総合的な物流コストの低減が可能です。
デメリット
一方で、3PLの利用には注意すべき点もあります。代表的なデメリットとして、情報漏洩のリスクが挙げられます。物流業務では、取引データや顧客情報、在庫状況など、企業にとって機密性の高い情報が扱われます。これらの情報を外部の3PL事業者と共有することにより、不正利用や漏洩のリスクが生じる可能性があります。そのため、信頼できるパートナーを選定することが重要です。
また、自社に物流ノウハウが蓄積されにくくなる点もデメリットとして挙げられます。物流業務を自社で運営すれば、課題解決や効率化の過程で得られる知見が組織に蓄積されますが、3PLに委託する場合、このような機会が減少します。その結果、長期的な視点での競争力向上に影響が出る可能性があります。
さらに、3PL事業者に依存することで、サービスの柔軟性が制約される場合があります。例えば、繁忙期や需要変動時に迅速な対応が困難だったり、契約条件によってサービスの範囲が限定されることがあるため、契約内容の事前確認が必要です。
3PLは、効率性、品質、コストの各面で大きなメリットを提供しますが、リスクも存在します。そのため、3PLの導入を検討する際は、メリットとデメリットを総合的に評価し、自社に最適な物流戦略を構築することが重要です。
3PL業者の選び方
3PL業者の規模や能力には大きな違いがあります。そのため、自社に適したパートナーを選定するには、具体的な基準を設け、慎重に比較・検討することが求められます。以下に、3PL業者を選ぶ際に注目すべきポイントをさらに詳しく解説します。
コンサルティング能力
コンサルティング能力は、3PL業者選びにおいて最も重要な要素の一つです。荷主企業が物流業務を外部委託する際、多くの場合、物流コストの増加やサービス品質の低下などの課題を抱えています。これらの課題を解決するには、3PL事業者に高度な問題解決能力が求められます。
優秀な3PL業者は、物流プロセス全体を分析し、ボトルネックを的確に特定します。そして、物流戦略の再設計や最適化を通じて、コスト削減やサービス品質向上を実現する提案を行います。また、業務の改善提案だけでなく、物流システムの制度設計や運用計画の策定も担えることが理想です。こうした能力を持つ業者は、荷主企業のパートナーとして長期的に信頼される存在となるでしょう。
情報システム構築能力
現代の物流では、情報システムが欠かせない基盤となっています。3PL業者に求められるのは、EDI(電子データ交換)やWMS(倉庫管理システム)、TMS(輸送管理システム)など、物流の効率化と透明性を向上させるシステムを構築・運用する能力です。
例えば、EDIシステムは取引データの正確性や迅速性を高めるだけでなく、人的ミスを削減し、取引先とのスムーズな連携を可能にします。また、WMSは入出荷や在庫管理を効率化し、リアルタイムでの在庫情報の把握を実現します。さらに、TMSは輸送ルートの最適化を図り、配送コストの削減や納期短縮に寄与します。
3PL業者の情報システム構築能力は、単なるシステム導入にとどまらず、荷主企業の要件に応じたカスタマイズや、既存の基幹システムとのデータ連携に対応できるかどうかが重要です。システムエンジニアを含む専門チームが揃っている業者であれば、複雑な課題にも柔軟に対応できるでしょう。
物流センターの運営能力
3PLの中核を担う物流センターの運営能力も、業者選定の際に重視すべきポイントです。物流センターは、入荷、保管、在庫管理、ピッキング、梱包、出荷といった一連の作業を統括し、物流全体の効率性を左右する重要な役割を果たします。
優れた3PL業者は、最新の設備やシステムを活用しながら、PDCAサイクルを高速回転させることで、継続的な改善を実現します。これにより、誤出荷の防止やリードタイムの短縮が可能となり、結果的にコスト削減につながります。
また、物流センターの運営能力は、業者のノウハウの深さに直結しています。例えば、同じ施設や設備を使っていても、業者の運用ノウハウ次第で品質やコストには大きな差が生じます。そのため、実績や導入事例を確認し、自社の業務に合った運営能力を持つ業者を選ぶことが大切です。
3PL業者を選定する際には、これらのポイントを総合的に評価することが重要です。業者の規模や提供サービスだけでなく、顧客対応力や実績、導入後のサポート体制なども含め、慎重に判断することが成功への鍵となります。適切な3PLパートナーと連携することで、物流業務の最適化を図り、自社の成長を支える基盤を築くことができるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?物流アウトソーシングが急速に普及する中で、「3PLとは」企業の物流業務を包括的に請け負い、効率化やコスト削減、高品質なサービスの提供を実現するビジネスモデルを指します。自社に最適な3PL業者を選定することは、企業の物流戦略を成功させる鍵となります。3PLを活用することで、物流業務の効率化やコスト削減、高品質なサービスの提供が可能となり、結果として顧客満足度や企業全体の競争力向上につながります。一方で、3PL業者の能力や実績には大きな差があるため、慎重な選定が必要です。
弊社トミーズコーポレーションは、中小企業を対象としたアパレル特化型の3PL事業者として、多くのお客様に寄り添いながら物流サービスを提供してまいりました。輸送機能を保持しない代わりに、物流センター運営のノウハウを活かし、商品の入出荷管理や在庫管理、梱包、配送まで、物流プロセス全体を高品質で効率的に運営しています。
特に、しまむら様や各種ホームセンター様との取引で求められるEDIシステムとの連携においては、多くの実績を積み重ねてきました。これにより、量販店とのスムーズな取引や、迅速な納品体制の構築を実現しています。また、近年のEC需要拡大に対応するため、さまざまなECシステムとの連携を可能にし、企業様のEC化率向上や新規参入をサポートする体制を整えています。
物流は、企業の経営を支える重要な基盤です。3PL業者の選定においては、コスト削減や効率化だけでなく、自社の事業特性や成長戦略にマッチしたパートナーを選ぶことが何よりも重要です。私たちトミーズコーポレーションでは、これからもお客様のニーズに応える柔軟な物流ソリューションを提供してまいります。
自社の物流機能を3PL業者に委託することをご検討中の場合は、ぜひお気軽にご相談ください。私たちの専門知識と実績を活かし、御社の物流課題を解決するお手伝いをさせていただきます。
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