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公開日: 2021/09/27
更新日: 2026/08/21

トレーサビリティとは?意味・仕組み・メリットを物流会社がわかりやすく解説

カテゴリ:物流業務について

製造業には食品、家電、自動車などさまざまな分野がありますが、どの業界でも重要になるのが製品の「安全」と「品質」です。万が一問題が発生したときには、原因を調べるだけでなく、「どの商品が対象なのか」「どこへ出荷されたのか」をすぐに把握できなければなりません。こうした製品の履歴を追跡できるようにする仕組みが「トレーサビリティ」です。

特に食品業界では、2001年9月に日本国内で初めてBSE(牛海綿状脳症)が確認されたことなどを背景に、食品がどこから来て、どこへ流通したのかを把握する重要性が広く認識されるようになりました。現在では食品だけでなく、自動車、医薬品、家電、物流など幅広い分野でトレーサビリティが活用されています。

この記事では、「トレーサビリティとは何か」をはじめ、追跡方法や対象範囲、導入するメリットや課題、バーコードやWMSを活用した物流現場での管理方法について解説します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは

トレーサビリティ(traceability)とは、製品や原材料が「いつ・どこで・どのように扱われたのか」を記録し、その履歴を追跡できるようにする仕組みです。日本語では「追跡可能性」などと訳されます。食品分野では、農林水産省が食品トレーサビリティを「食品の移動を把握できること」と説明しています。例えば、原材料の仕入先、製造した工場や製造日、ロット番号、入荷した倉庫、出荷先などを記録しておけば、商品に問題が発生した場合でも、その商品がどこから来て、どこへ出荷されたのかを確認できます。問題の原因を調べるだけでなく、影響を受ける商品や出荷先を絞り込み、迅速な回収や対応につなげられることがトレーサビリティの大きな目的です。

トレーサビリティには、追跡する方向によって「トレースフォワード」と「トレースバック」という2つの考え方があります。

トレースフォワード

トレースフォワードとは、生産・製造側から販売先や消費者側へ向かって製品の流れを追跡することです。例えば、製造後に特定のロットで不具合が見つかった場合、そのロットの商品が「どの倉庫に入荷し、どの店舗や取引先へ出荷されたのか」を追跡します。対象となる商品の出荷先を把握できれば、問題のない商品まで一律に回収するのではなく、対象範囲を絞った対応を行いやすくなります。物流倉庫でも、入荷した商品と出荷データをロット単位で紐づけておけば、「このロットの商品をどの注文に対して出荷したのか」を確認できます。

トレースバック

トレースバックは反対に、販売された商品や出荷された製品から、生産・製造側へ履歴をさかのぼることです。例えば、消費者から商品の不具合について問い合わせがあった場合、商品コードやロット番号などをもとに、製造日、製造工程、使用した原材料、仕入先などを確認します。食品であれば、問題が発生した商品のロットから原材料の供給元や製造工程を調べることで、原因究明や再発防止につなげることができます。トレースフォワードとトレースバックの両方を行える状態にしておくことで、問題が発生した際に「原因」と「影響範囲」の双方を確認できるようになります。なお、トレーサビリティは必ずしも高度なITシステムを導入しなければ実現できないものではありません。紙や帳票による記録でも追跡できればトレーサビリティは成立します。一方で、扱う商品や取引量が多くなると、バーコード、RFID、WMSなどのシステムを活用した方が、記録や検索を正確かつ効率的に行いやすくなります。

トレーサビリティの範囲

内部トレーサビリティ

トレーサビリティは、追跡する範囲によって「チェーントレーサビリティ」と「内部トレーサビリティ」に分けられます。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティとは、原材料の調達から製造、物流、販売まで、複数の企業や拠点をまたいで製品の流れを追跡できるようにすることです。
例えば、生産者 → メーカー → 物流倉庫 → 卸売業者 → 小売店と商品が移動する場合、それぞれの事業者が入荷・出荷などの記録を残し、必要に応じて情報を確認できるようにします。問題が発生した際に、製造元だけが記録を持っていても、その後どこへ流通したか分からなければ迅速な対応はできません。そのため、サプライチェーン全体で記録をつなげることが重要です。食品、自動車、医薬品など、複数の事業者を経由して消費者へ届く製品では、チェーントレーサビリティが重要になります。ただし、企業ごとに使用する商品コードやシステム、管理方法が異なることも多いため、情報をどのようにつなぐかが課題になります。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、工場や物流倉庫など、一つの企業・拠点の内部で製品や作業の履歴を追跡できるようにすることです。製造業であれば、どの原材料を使用し、どの製造ラインを通り、いつ製品が完成したのかを記録します。

物流倉庫であれば、
「いつ商品が入荷したのか」
「どのロケーションに保管したのか」
「どの商品をピッキングしたのか」
「いつ、どの注文に対して出荷したのか」
といった情報を記録します。

こうした履歴が残っていれば、問題が発生した際にも対象商品や作業工程を確認しやすくなります。また、ロット番号や消費期限などをWMSで管理することで、「どのロットが倉庫内に残っているのか」「どのロットをどの取引先へ出荷したのか」といった情報も確認できます。物流業務では、単に現在の在庫数を把握するだけでなく、商品が入荷してから出荷されるまでの履歴を残すことが内部トレーサビリティにつながります。

トレーサビリティを導入するメリット

トレーサビリティを導入することで、問題発生時のリスク管理だけでなく、品質管理や業務改善にも活用できます。ここでは代表的なメリットを紹介します。

製品のリスク管理

トレーサビリティの大きなメリットが、製品に問題が発生した際のリスク管理です。例えば、商品をロット単位で管理し、その入荷・製造・出荷履歴を記録しておけば、問題が特定のロットに限定されている場合、そのロットの在庫や出荷先を特定できます。食品で異物混入や表示上の問題が発生した場合にも、対象となる製造ロットと出荷先を把握できれば、回収範囲を判断しやすくなります。自動車や家電などでも同様に、問題がある部品や製品の製造履歴を追跡することで、影響範囲を確認できます。すべての商品を対象に調査や回収を行うよりも、対象範囲を絞り込めるため、対応にかかる時間やコストの削減にもつながります。

作業の効率化・品質向上

トレーサビリティのために蓄積したデータは、問題発生時だけでなく日常の業務改善にも活用できます。
例えば、

「どの材料を使用したのか」
「いつ製造されたのか」
「どの工程を通ったのか」
「どこへ出荷されたのか」

といった履歴が残っていれば、不良が発生した際に原因となった工程を調べやすくなります。
また、作業時間や入出荷履歴などを記録している場合には、工程ごとの処理時間を比較することで、作業が滞留している箇所を発見する材料にもなります。物流倉庫でも、入荷、棚入れ、ピッキング、検品、出荷などの作業履歴をWMSに記録することで、「いつ・どこで・どの商品に対して作業が行われたか」を確認しやすくなります。人の記憶や紙の記録だけに頼らず、データを残すことが品質管理や業務改善につながります。

顧客満足度の向上

商品に問題が発生した際、企業がどれだけ早く正確に対応できるかは、顧客からの信頼にも影響します。トレーサビリティが確立されていれば、問い合わせを受けた商品について製造履歴や流通履歴を確認し、必要な情報を迅速に調査できます。また、企業がトレーサビリティによって管理している情報の一部を消費者向けに提供するケースもあります。例えば、QRコードなどから産地、生産者、製造情報などを確認できる仕組みです。ただし、トレーサビリティは本来「製品の移動や履歴を追跡できるようにする仕組み」であり、すべての情報を消費者に公開することを意味するものではありません。必要な情報を正確に記録し、必要なときに確認できることが、顧客への適切な対応につながります。

ブランド力の向上

品質や安全性に関する履歴を適切に管理できる体制は、企業の信頼性を支える要素の一つになります。特に、問題発生時に対象商品を特定し、迅速に原因調査や回収対応を行える企業であれば、取引先や消費者に対して管理体制を説明しやすくなります。また、製造番号やシリアル番号、流通履歴などを管理する仕組みは、不正な流通を確認する際にも利用できます。ただし、トレーサビリティを導入するだけで偽造品や転売を完全に防げるわけではありません。個体識別や認証システムなどと組み合わせることで、不正流通の把握や確認に役立てることができます。サプライチェーンの透明性が重視される中で、「どこで作られ、どのように流通したのかを説明できる状態」を整えることは、企業や商品の信頼性を高めることにもつながります。

トレーサビリティの課題

トレーサビリティには多くのメリットがありますが、導入すれば自動的にすべての履歴を追跡できるわけではありません。どこまで記録するのか、誰が入力するのか、企業間でどの情報を共有するのかなど、実際の運用を決める必要があります。

トレーサビリティの導入状況には差がある

トレーサビリティへの取り組み状況は、業界や企業によって差があります。農林水産省の令和2年度「生産者等の食品トレーサビリティに関する意識・意向調査」では、流通加工業者における内部トレーサビリティについて、「取組を実施している」が45.1%、「取組を実施していない」が54.9%という結果でした。この調査は令和2年度のものですが、トレーサビリティを導入する際には現在でも、記録作業の負担や管理方法、システム導入などを検討する必要があります。

生産者等の食品トレーサビリティに関する意識・意向調査結果グラフ

入荷した原料又は製品を加工工程の中でどの製品に使用し、どこに出荷・販売したか対応付ける記録の保存(内部トレーサビリティ)の取組については、「取組を実施している」と回答した割合は 45.1%で、「取組を実施していない」と回答した割合は 54.9%であった。これを業種別にみると、食品製造業と食品卸売業では、「取組を実施している」と回答した割合が5割を超えている。入荷した製品を消費者に提供する食品小売業と外食産業では、「取組を実施していない」と回答した割合が6割を超えている。

(参考:農林水産省「生産者等の食品トレーサビリティに関する意識・意向調査結果」)

企業同士で認識が異なる

チェーントレーサビリティを構築する場合、複数の企業が同じ商品や原材料について情報をつなぐ必要があります。しかし、企業によって管理方法や使用しているシステムが異なるため、「どの商品を、どの単位で、どの情報まで追跡するのか」を合わせることが重要です。例えば、メーカーでは製造ロット単位で管理していても、物流会社や販売会社では商品コード単位でしか管理していない場合があります。また、同じ商品でも企業ごとに異なる商品コードを使用していれば、企業間でデータを連携する際にコードの変換や紐付けが必要になります。そのため、チェーントレーサビリティを構築する際には、使用する商品コード、ロット番号、記録する項目、データ形式などを事前に整理する必要があります。

コストがかかる

トレーサビリティを細かく管理しようとすると、システム導入や機器の購入、作業手順の変更などにコストがかかります。例えば、バーコード管理を行う場合には、ラベル発行環境、バーコードリーダーやハンディターミナル、管理システムなどが必要になる場合があります。さらに、システムを導入するだけでなく、現場で確実にスキャンや登録を行うためのルール作りや教育も必要です。一方で、すべての工程を最初から細かく管理する必要があるとは限りません。
まず「何を追跡できるようにしたいのか」を明確にし、必要な範囲からトレーサビリティを構築することが重要です。例えば、物流倉庫であれば、商品コードだけで管理するのか、ロット番号や消費期限まで管理するのかによって、必要なシステムや作業内容は大きく変わります。

データの管理とセキュリティの課題

トレーサビリティでは、商品コード、ロット番号、仕入先、出荷先、作業履歴など多くのデータを扱います。そのため、データへのアクセス権限や保存期間、バックアップなど、適切な管理方法を決めておくことが重要です。特に複数企業のシステムを連携する場合には、不正アクセスや情報漏えいなどへのセキュリティ対策も必要になります。また、セキュリティと同じくらい重要なのが「記録されているデータが正しいか」という点です。トレーサビリティは記録されたデータをもとに追跡するため、最初の入力が間違っていれば正しい追跡はできません。手入力をできるだけ減らし、バーコードなどを利用して商品やロットを読み取る仕組みにすることは、入力ミスを減らす方法の一つです。

トレーサビリティに利用されるバーコード

トレーサビリティを効率的に行うための代表的な手段がバーコードです。バーコードには大きく分けて、一次元バーコードと二次元バーコードがあります。一次元バーコードの代表例として、スーパーやコンビニなどの商品に使用されているJANシンボルがあります。JANコード(GTIN)は商品を識別するためのコードです。バーコードを読み取ることで商品を特定し、システムの商品マスタなどに登録された商品名や価格と紐付けて利用できます。つまり、JANコードそのものに商品名や販売価格が記録されているわけではなく、商品を識別するための番号として利用されます。

一方、QRコードやData Matrixなどの二次元バーコードは、一次元バーコードより多くの情報を扱えるという特徴があります。また、GS1標準のバーコードでは、商品識別コードだけでなく、ロット番号、製造日、賞味期限、消費期限などの属性情報を表すこともできます。こうした情報をバーコードで読み取ってシステムに登録すれば、商品とロットや期限情報を正確に紐付けやすくなります。トレーサビリティでは、それぞれの工程で「いつ・どの商品に・どのような作業を行ったのか」という履歴を残すことが重要です。バーコードを利用すれば、商品コードなどを手入力する代わりに、ハンディターミナルなどで読み取って記録できます。手入力を減らすことができるため、入力間違いや記録漏れを抑えながら、作業履歴を蓄積できる点が大きなメリットです。

バーコードは倉庫管理にも有効

バーコードは、物流倉庫でも広く利用されています。入荷検品、棚入れ、ロケーション管理、ピッキング、出荷検品、棚卸しなど、倉庫内のさまざまな作業でバーコードを活用できます。例えば、入荷時に商品バーコードを読み取り、

「どの商品が」
「いつ」
「何個入荷し」
「どのロケーションへ格納されたのか」

をWMS(Warehouse Management System:倉庫管理システム)へ登録します。出荷時には、ピッキングした商品を再度バーコードで読み取り、出荷指示の商品と一致しているかを確認します。これにより、商品を目視だけで確認する場合と比較して、取り違えや誤出荷を防ぎやすくなります。また、ロット番号を管理している場合には、

「現在倉庫にどのロットが残っているのか」
「特定のロットをどの出荷先へ発送したのか」

といった情報も確認できます。

消費期限や賞味期限を管理できるWMSであれば、期限の近い商品から出荷する運用などにも活用できます。このように倉庫内の作業をデータとして記録しておけば、トレーサビリティだけでなく、在庫管理や業務改善にも利用できます。
例えば、入荷や出荷の処理時間、作業件数などを確認することで、作業が集中している工程や改善すべきポイントを把握する材料になります。物流におけるトレーサビリティでは、商品にバーコードを付けるだけではなく、そのバーコードを「いつ・どこで読み取ったのか」をWMSなどに記録していくことが重要です。

まとめ

トレーサビリティとは、原材料の調達から製造、流通、販売までの履歴を記録し、必要なときに製品の移動や履歴を追跡できるようにする仕組みです。問題が発生した際には、トレースバックによって原因をさかのぼり、トレースフォワードによって対象商品がどこへ出荷されたのかを確認できます。トレーサビリティを実現する方法は一つではありません。紙による記録でも実現できますが、商品数や取引量が多い場合には、バーコードやWMSなどを活用することで、より効率的かつ正確に履歴を管理できます。物流倉庫では、商品バーコードを利用して入荷、保管、ピッキング、検品、出荷などの作業を記録することで、「どの商品が、いつ入荷し、どこに保管され、いつ出荷されたのか」を確認できるようになります。さらにロット番号や消費期限などを管理すれば、より詳細なトレーサビリティを構築できます。

弊社トミーズコーポレーションが提供するクラウドWMS「BEELOGI(ビーロジ)」では、スマートフォンをハンディターミナルとして利用することで、倉庫内の商品管理をサポートしています。専用の高額なハンディターミナルではなくスマートフォンを活用することで、導入時の機器コストを抑えやすいことも特徴です。また、Wi-Fi環境がない場所でも、利用する端末や通信環境に応じて4G・5Gなどのモバイル回線を使用できるため、さまざまな倉庫環境で利用できます。トレーサビリティを検討する際には、「どの情報を追跡したいのか」を最初に整理することが重要です。

商品単位でよいのか、ロット単位まで必要なのか、消費期限まで管理するのかによって、必要となる仕組みは変わります。バーコードとWMSをうまく組み合わせることで、トレーサビリティの確保と倉庫業務の効率化を同時に進めることができます。

製品のバーコード管理ならクラウドWMS「BEELOGI(ビーロジ)」

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