動脈物流と静脈物流とは?違いや種類をわかりやすく解説
目次
動脈物流と静脈物流とは
物流には、商品や原材料が生産・販売を経て消費者へ届く流れだけでなく、使用済み製品や資材などが回収され、再利用・再資源化される逆方向の流れもあります。前者は「動脈物流」、後者は「静脈物流」と呼ばれています。動脈物流は、製品を製造者から消費者へ届ける物流です。一方の静脈物流は、消費者などから排出されたものを回収し、再利用や再資源化につなげる物流を指します。また、実際の物流業務では、商品の返品やパレット・通い箱などの回収、廃棄物の輸送など、供給時とは反対方向にモノが動く物流も静脈物流として扱われています。
本記事では、動脈物流と静脈物流の違いを整理したうえで、それぞれの物流の特徴や代表的な種類、両者の関係についてわかりやすく解説します。
動脈物流と静脈物流の違い
動脈物流と静脈物流の大きな違いは、モノが流れる方向と目的にあります。動脈物流は、原材料の調達から商品の生産・販売を経て、消費者や納品先へ商品を届ける方向の物流です。これに対して静脈物流は、使用済み製品や資材、廃棄物などを消費者や利用者側から回収し、再利用・再資源化などにつなげる方向の物流です。人の体で、心臓から全身へ血液を送り出す「動脈」と、全身から心臓へ血液を戻す「静脈」にたとえて、このように呼ばれています。
両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 項目 | 動脈物流 | 静脈物流 |
|---|---|---|
| モノの主な流れ |
生産・供給側 → 消費・利用側 |
消費・利用側 → 回収・処理側 |
| 主な目的 | 原材料や商品を必要な場所へ供給する | 回収したものを再利用・再資源化・適正処理などにつなげる |
| 代表的な物流 | 調達物流・生産物流・販売物流 | 回収物流・返品物流・廃棄物流など |
| 具体例 | 原材料の工場への輸送、店舗への納品、EC商品の配送 | 使用済み製品の回収、商品の返品、パレットの回収、廃棄物の輸送 |
このように、動脈物流と静脈物流はモノの流れる方向が異なりますが、どちらも物流全体を構成する重要な流れです。商品を届けるところだけでなく、その後の返品や回収、再利用・再資源化まで含めて考えることで、物流全体の流れを把握しやすくなります。

動脈物流の種類
動脈物流は、原材料や部品などを調達し、製品を生産して、最終的に顧客へ届けるまでの物流を指します。動脈物流として扱われる物流には、「調達物流」「生産物流」「販売物流」などがあります。それぞれモノが移動する場所や目的が異なるため、ここでは代表的な3つの物流について解説します。
調達物流
調達物流とは、製品の生産に必要となる原材料や部品、半製品などを、仕入先や供給元から工場などの生産拠点へ運ぶ物流です。たとえば、メーカーが製品を生産するために必要な部品を部品メーカーから仕入れ、自社工場へ輸送する流れが調達物流にあたります。調達する原材料や部品が予定どおり届かなければ、生産計画にも影響する可能性があります。そのため、必要な資材を必要な時期に安定して調達できる物流体制を整えることが重要です。また、複数の仕入先から個別に納品を受ける場合には、入荷回数や輸送量、在庫量などを把握し、調達方法を見直すことも物流効率化につながります。
生産物流
生産物流とは、製造に関係するモノを生産工程に合わせて移動させる物流です。製造業では、原材料や部品の搬送だけでなく、工場から物流センターなどへの製品の移動も生産物流として扱われることがあります。たとえば、工場で使用する部品を各製造工程へ供給したり、完成した製品を工場から自社の物流センターへ移動させたりするケースが該当します。生産に必要な部品や製品の流れが滞ると、生産ラインの停止や作業待ちにつながる可能性があります。そのため、生産計画に合わせてモノを適切な場所へ移動させることが生産物流では重要になります。生産拠点や物流拠点が複数ある企業では、拠点間の輸送や在庫配置を含めて物流全体を管理することも必要です。
販売物流
販売物流とは、生産された商品を物流センターや倉庫などから、卸売業者、小売店、消費者などの顧客へ届ける物流です。メーカーから卸売業者や小売店へ商品を納品するBtoBの物流だけでなく、ECサイトで購入された商品を物流センターから消費者へ発送するような物流も含まれます。販売物流では、商品の保管、在庫管理、ピッキング、梱包、出荷、配送など、商品を顧客へ届けるまでにさまざまな物流業務が発生します。特にECでは、少量の商品を多数の配送先へ発送するケースも多いため、受注から出荷までの作業を正確かつ効率的に行うことが求められます。商品を必要とする顧客へ、適切な商品を確実に届けることが販売物流の基本的な役割です。
このように、動脈物流では、原材料や部品の調達から生産、商品の販売まで、モノが供給側から需要側へ向かって移動します。それぞれの物流は独立しているわけではなく、一連のモノの流れとしてつながっています。
静脈物流とは
静脈物流とは、製品を製造者から消費者へ届ける動脈物流とは反対に、消費者などから排出されたものを回収し、再利用や再資源化などにつなげるための物流です。国土交通省では、消費者から排出される廃棄物などを循環資源として再利用・再資源化するための輸送によって生じる物流を「静脈物流」としています。製品が生産されて利用者へ届くまでを「動脈」、利用された製品や資材などが回収され、再資源化されるまでを「静脈」にたとえた呼び方です。近年では、資源を一度使用して廃棄するだけでなく、回収した製品や素材を再利用・再資源化する資源循環の重要性が高まっています。そのため、商品を届ける動脈物流だけでなく、使用後の製品や資材を回収し、再び資源として活用するための静脈物流も、物流全体を考えるうえで重要な役割を担っています。
静脈物流で扱われる主な物流
静脈物流に関連する物流として、回収物流、返品物流、廃棄物流などがあります。これらはすべて同じ目的で行われるわけではありません。再利用を目的とするもの、販売元へ戻すもの、適正な処理を目的とするものなど、対象となるモノや目的によって物流の流れも異なります。ここでは、代表的な物流についてそれぞれ解説します。
回収物流
回収物流とは、使用済みの製品や容器、梱包資材などを利用者や納品先から回収する物流です。たとえば、使用済み製品をリサイクルするために回収したり、繰り返し使用するパレットや折りたたみコンテナなどを納品先から回収したりするケースがあります。回収されたものは、そのまま再使用される場合もあれば、分別や処理を行ったうえで再資源化される場合もあります。動脈物流では企業側から納品先へ向かってモノが流れますが、回収物流では納品先や利用者側から回収拠点などへ向かってモノが戻る点が特徴です。回収元が複数に分散している場合には、それぞれの場所からモノを集める必要があるため、回収方法や輸送ルートを適切に設計することも重要になります。
返品物流
返品物流とは、販売した商品などが、消費者や小売店などから販売元や物流拠点へ戻される物流です。たとえば、ECサイトで購入された商品の返品、小売店からメーカーや卸売業者への返品などが該当します。返品された商品は、倉庫へ戻せば完了するわけではありません。商品の状態を確認し、再販売できる商品、補修が必要な商品、再利用・再資源化する商品などに仕分ける作業が発生する場合があります。特にECでは、通常の出荷とは逆方向に商品が戻ってくるため、返品受付から回収、検品、在庫への戻しなど、一連の業務を適切に管理することが重要です。なお、国土交通省による静脈物流の定義は廃棄物などの再利用・再資源化を中心としたものです。返品物流は、より広い意味での「逆方向にモノが流れる物流(リバースロジスティクス)」として扱われることがあります。
廃棄物流
廃棄物流とは、不要となった製品や資材、廃棄物などを、処理施設や再資源化施設などへ運ぶ物流です。事業活動によって発生した廃棄物を収集し、適切な処理施設へ輸送するケースなどが該当します。廃棄物の輸送については、一般的な商品の配送とは異なり、廃棄物処理法をはじめとした関連法令に基づいた適正な取り扱いが必要です。また、回収されたものがすべて廃棄されるわけではありません。素材や状態によっては再利用や再資源化が可能なものもあるため、適切に分別し、資源として再び活用できる流れをつくることも重要です。このように、静脈物流に関連する物流では、単にモノを元の場所へ戻すだけではなく、回収後の再利用、再資源化、返品処理、適正処理など、目的に応じてさまざまな対応が必要になります。
動脈物流と静脈物流の相互関係
動脈物流と静脈物流は、モノが流れる方向は異なりますが、互いに独立したものではありません。動脈物流によって原材料や商品が供給され、その後に使用された製品や資材などを回収し、再利用・再資源化につなげるのが静脈物流です。つまり、「届ける物流」と「戻す物流」をつなげることで、モノや資源を循環させる仕組みを構築できます。たとえば、商品を小売店へ納品する際には、メーカーや物流センターから店舗へ商品が運ばれます。これは動脈物流にあたります。一方で、納品に使用したパレットや折りたたみコンテナなどを店舗から回収し、再び物流で使用する場合には、反対方向の物流が発生します。また、使用済み製品を回収し、そこから取り出した素材を再資源化して新たな製品の原材料として利用する場合も、動脈側と静脈側の物流がつながる例といえます。
資源循環における動脈物流と静脈物流
従来の大量生産・大量消費・大量廃棄を前提とした一方向の経済から、資源を循環させながら有効活用する「サーキュラーエコノミー(循環経済)」への移行が進められています。サーキュラーエコノミーでは、製品を生産して販売するだけでなく、使用後の製品や素材を回収し、可能なものを再利用・再資源化して再び経済活動の中で活用していくことが重要になります。そのためには、商品や資材を供給する動脈側だけでなく、使用後の製品や資材を回収する静脈側まで含めて物流の流れを考える必要があります。たとえば、再生材を新たな製品の原材料として利用するためには、使用済み製品などを回収し、選別・再資源化したうえで、再び製造工程へ供給する流れが必要です。このように、動脈物流と静脈物流をつなげることで、資源を一方向に消費するだけではなく、回収したものを再び活用する循環を形成することができます。
動脈物流と静脈物流を効率化するポイント
動脈物流と静脈物流ではモノの流れる方向や目的が異なりますが、どちらも輸送や保管、荷役などの物流業務が発生します。物流を効率化するためには、それぞれを個別に考えるだけでなく、商品を届ける流れから、返品・回収などによって戻ってくる流れまで把握することが重要です。ここでは、動脈物流と静脈物流を効率化するための主なポイントを紹介します。
モノと情報の流れを把握する
物流を効率化するためには、まず「何が・どこから・どこへ・どれだけ移動しているのか」を把握する必要があります。動脈物流では、入荷、在庫、出荷などの情報を管理することで、過剰在庫や欠品の防止、出荷作業の効率化などにつなげることができます。一方、静脈側では複数の場所から製品や資材が回収されることもあり、動脈側と比べてモノや情報の流れが複雑になる場合があります。そのため、出荷だけでなく返品や回収まで含めて情報を管理できる仕組みを整えることが重要です。
輸送の効率化を図る
物流では、少量の商品を何度も輸送したり、積載量の少ない状態でトラックを運行したりすると、輸送効率が低下する可能性があります。そのため、納品回数や配送ルートを見直したり、複数の荷物をまとめて輸送したりするなど、輸送方法を検討することが重要です。静脈物流でも同様に、回収先ごとに個別の車両を手配するのではなく、回収量や回収頻度に応じてルートを設定することで、効率化できる場合があります。また、納品に使用した車両の帰路で回収品を運ぶなど、往路と復路の物流を組み合わせられる場合には、車両を有効活用できる可能性があります。ただし、積載する貨物の種類や輸送条件、関連法令などによって同じ車両で輸送できないケースもあるため、実際の運用に合わせた確認が必要です。
返品・回収のルールを明確にする
静脈物流では、いつ、どの商品が、どのような状態で戻ってくるのかを事前に予測しにくい場合があります。特に返品では、再販売できる商品だけでなく、破損品や開封済みの商品など、状態の異なる商品が戻ってくることがあります。
返品された商品をその都度判断していると、検品や仕分けに時間がかかるため、返品受付、検品、仕分け、在庫への戻し、廃棄などの判断基準をあらかじめ決めておくことが重要です。また、パレットや通い箱などを回収する場合には、回収対象や数量、回収場所などを管理し、紛失や滞留を防ぐ仕組みを整えることも必要です。
物流拠点での作業を標準化する
輸送だけでなく、倉庫や物流センターで発生する荷役や検品、仕分けなどの作業を見直すことも物流効率化につながります。動脈物流では、入荷から保管、ピッキング、梱包、出荷までの作業手順を整理し、誰が作業しても一定の品質を保てるように標準化することが重要です。静脈物流では、戻ってきた商品の状態確認や仕分けなど、通常の出荷とは異なる作業が発生します。返品や回収品の置き場所、検品方法、処理方法などをあらかじめ決めておくことで、通常の出荷作業と返品・回収作業が混在することによる作業ミスや滞留を防ぎやすくなります。このように、動脈物流と静脈物流の効率化では、輸送だけを見直すのではなく、モノと情報の流れ、倉庫内の作業、返品・回収のルールまで含めて物流全体を確認することが重要です。
静脈物流が注目される背景
静脈物流が重要視される背景には、限りある資源を有効に活用し、廃棄物の発生を抑えながら資源を循環させる考え方の広がりがあります。従来のように、資源を調達して製品をつくり、使用後に廃棄するだけではなく、使用済み製品や素材を回収し、再利用・再資源化して再び活用することが求められるようになっています。こうした資源循環を実現するためには、製品を消費者へ届ける動脈物流だけでなく、使用後の製品や資材を回収する静脈物流の仕組みが必要です。
サーキュラーエコノミーへの移行
サーキュラーエコノミー(循環経済)とは、製品や資源を可能な限り循環させ、新たな資源の投入や廃棄物の発生を抑えていく考え方です。日本でも、循環経済への移行が重要な政策として位置付けられており、製品の設計や製造、販売だけでなく、使用後の回収、再利用、再資源化まで含めた資源循環の仕組みづくりが進められています。製品や素材を再利用・再資源化するためには、使用済み製品などを回収し、選別や処理を行う拠点へ運ぶ必要があります。そのため、サーキュラーエコノミーを支える物流の一つとして、静脈物流の役割も重要になります。
再生資源を活用するための物流が必要になる
使用済み製品や廃材などを新たな製品の原材料として活用するためには、対象となる資源を回収し、再資源化できる場所へ運ぶ仕組みが必要です。さらに、再資源化された素材を製造拠点へ供給することで、再び動脈側の物流へ戻すことができます。つまり、資源を循環させるためには、製造や販売だけを見るのではなく、回収から再資源化、再び製造へ戻るまでの物流全体をつなげて考えることが重要です。
リユースや回収の仕組みづくり
資源循環では、すべての製品をすぐに廃棄・再資源化するのではなく、そのまま再使用できるものをリユースすることも重要です。たとえば、物流で使用されるパレットや折りたたみコンテナなどは、納品後に回収して繰り返し使用することで、新たな資材の使用を抑えることができます。製品についても、使用後の回収や状態確認を行い、再使用できるものを再び活用する仕組みが考えられます。こうした仕組みを維持するためには、「販売・納品する物流」だけでなく、「回収する物流」まで設計することが必要になります。
静脈物流は資源循環を支える役割を持つ
静脈物流そのものが資源を再生するわけではありませんが、再利用や再資源化を行うためには、使用済み製品や資材などを適切な場所へ運ぶ必要があります。回収する仕組みがなければ、再使用や再資源化が可能なものでも、資源として活用することが難しくなります。そのため静脈物流は、動脈物流と再利用・再資源化の工程をつなぎ、資源循環を支える重要な役割を担っています。
まとめ
動脈物流とは、原材料や商品を生産・供給側から消費者や納品先へ届ける物流です。一方、静脈物流は、使用済み製品や資材などを回収し、再利用・再資源化などにつなげる物流を指します。動脈物流には、調達物流、生産物流、販売物流などがあり、静脈物流に関連する物流としては、回収物流、返品物流、廃棄物流などがあります。両者はモノが流れる方向こそ異なりますが、別々に存在するものではありません。商品を届ける動脈物流と、使用後の製品や資材を回収する静脈物流をつなげることで、モノや資源を循環させる仕組みを構築できます。また、物流を効率化するためには、輸送だけでなく、在庫や返品・回収の情報、倉庫内の作業、回収後の処理まで含めて物流全体を把握することが重要です。資源循環やサーキュラーエコノミーへの取り組みが進む中で、商品を届けるまでの物流だけでなく、届けた後にどのように回収し、再利用・再資源化へつなげるかという視点も重要になっています。動脈物流と静脈物流、それぞれの役割と違いを理解し、自社の物流全体を見直すことが、効率的で持続可能な物流体制を考える第一歩となります。