物流倉庫での『フリーロケーション』とは?固定管理との違いやメリットを徹底解説

物流倉庫におけるロケーション管理は、商品の保管と在庫の効率化において極めて重要な役割を果たします。その中でも「固定ロケーション」と「フリーロケーション」という2つの管理方法は、それぞれ異なる特性を持ち、用途や業界ごとに使い分けられています。
固定ロケーションは、特定の商品をあらかじめ決められた固定の場所に保管するシンプルな方法で、一目で在庫状況を把握しやすいのが特徴です。一方、フリーロケーションは、商品の入荷やロット、消費期限などの条件に基づいて柔軟に保管場所を登録する方法で、保管スペースの有効活用に優れています。
この記事では、これら2つの管理方法の違いを明らかにし、それぞれのメリットとデメリットを比較しながら、どのように倉庫管理を最適化できるのかを解説していきます。適切なロケーション管理を選ぶことで、作業効率やスペース活用の向上、在庫管理効率化手助けとなればと思います。
目次
ロケーションマスタの設定
ロケーション管理を効率的に行うためには、倉庫管理システム(WMS)内で「ロケーションマスタ」を設定する必要があります。ロケーションマスタとは、倉庫内の各保管場所をデータとして登録し、商品の配置や在庫状況を管理するための基盤となる仕組みです。この設定を行うことで、「固定ロケーション」や「フリーロケーション」を一元的に管理できます。
固定ロケーションでは、登録された商品の在庫がなくなってしまってもロケ登録を抹消せずに残すのに対して、「フリーロケーション」では登録された商品の在庫がなくなった時点でロケ登録を抹消し、次の商品の登録を可能とします。
固定ロケーションの特徴
固定ロケーションは、特定の商品をあらかじめ決められた固定の場所に保管する管理方法です。商品と保管場所が常に対応付けられているため、初心者の作業員でも管理しやすく、特にロット管理が不要な定番商品や季節商品の保管に適しています。このシンプルな管理方法には、次のような特徴があります。
メリット
在庫切れが一目で分かる
固定ロケーションでは、商品がなくなった場合でもロケーションの登録を消さないため。そ、空き棚を見れば在庫切れがすぐに分かり、商品の補充計画を立てやすくなります。特に、頻繁に消費される商品や重要な商品での利用に最適です。
シンプルで管理しやすい
商品と保管場所が常に一定であるため、WMS(倉庫管理システム)や作業員による管理がシンプルで分かりやすくなります。初心者でも迷わず作業できるため、教育コストを抑えられる点もメリットです。
デメリット
保管スペースが無駄になりやすい
商品の在庫がなくなった場合でも、棚はその商品専用の場所として運用され続けます。このため、特に倉庫の保管スペースが限られている場合には、効率の悪さが問題となることがあります。
柔軟性に欠ける
商品の入れ替えが頻繁に発生する場合や、シーズンによって商品の保管ニーズが変動する場合には、この方法は柔軟性が低く、対応が難しくなります。
固定ロケーションは、定番商品の保管や長期間変動の少ない商品の管理には非常に有効です。一方で、スペース効率を重視する必要がある場合や商品種類が多岐にわたる場合には、別の管理方法と組み合わせて利用することが求められます。
フリーロケーションの特徴
フリーロケーションは、商品の入荷状況やロット番号、消費期限などに応じて柔軟に保管場所を設定する管理方法です。この方法は、取り扱い商品が多岐にわたる場合や頻繁に商品の入れ替えが発生する倉庫で特に有効です。商品が在庫切れになった時点でそのロケーションの登録を消し、新たな商品を保管可能にすることで、保管スペースの有効活用を実現します。以下に、フリーロケーションのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
保管スペースの効率的な活用
フリーロケーションでは、在庫がなくなった際にその保管場所を他の商品に使用できます。これにより、倉庫の保管スペースを無駄なく使い切ることが可能となり、特にスペースが限られた倉庫では大きな利点となります。
作業効率の向上
WMS(倉庫管理システム)を活用し、入庫時に最適なロケーションを自動的に選定できるため、倉庫内での作業時間を短縮できます。また、商品の配置が柔軟に行えるため、ピッキングや補充作業の効率化にもつながります。
多品目商品の管理に適している
取り扱い商品が多岐にわたる場合や、季節商品、消費期限のある商品を扱う倉庫では、フリーロケーションの柔軟性が大きな強みとなります。
デメリット
登録ミスのリスク
フリーロケーションでは、商品の入庫時に正確なロケーション登録が必須です。万が一登録ミスが発生すると、在庫情報が実際の状況と一致しなくなり、商品の引き当てや出荷作業に支障をきたす可能性があります。
リアルタイム管理の必要性
在庫情報を常に正確に保つためには、リアルタイムでのデータ更新が不可欠です。適切なシステムがない場合、在庫数の把握が難しくなる可能性があります。
フリーロケーションは、保管スペースの効率化や多品目商品への対応力が高い反面、システム運用の精度と作業ミス防止策が重要なポイントとなります。この方法を導入することで、倉庫全体のパフォーマンスを向上させる可能性がありますが、慎重な計画と運用体制の整備が必要です。
メリット・デメリットを比較する
固定ロケーションとフリーロケーションには、それぞれ異なる特徴があり、どちらを選ぶかは倉庫の規模や取り扱い商品の特性、業務の目的によって異なります。以下に、両者のメリットとデメリットを分かりやすく比較した表を提示します。
項目 | 固定ロケーション | フリーロケーション |
---|---|---|
メリットA |
・在庫切れが一目でわかる ・シンプルで管理が容易 |
・保管スペースの効率に活用 ・作業効率の向上 ・多品目商品の管理に適している |
デメリット |
・保管スペースが無駄になりやすい ・柔軟性に欠ける |
・登録ミスのリスクがある ・リアルタイムでの管理が必要 |
適した状況 | ・定番商品や変動が少ない商品の管理 |
・多品目商品や季節商品化の管理 ・消費期限やロット管理が必要な場合 |
固定ロケーションは、商品の動きが少ない場合や作業が単純である方が良い状況に最適です。例えば、定番商品や在庫切れを即座に把握したい商品に適しています。一方で、商品の種類が多く保管場所を効率的に活用したい場合や、消費期限管理が必要な商品にはフリーロケーションが向いています。
固定ロケーションのポイント
固定ロケーションは、在庫切れの可視化が容易で、シンプルな管理方法が求められる場合に適しています。ただし、在庫がなくても保管場所が専有されるため、保管スペースが十分にある場合に採用するのが理想的です。
フリーロケーションのポイント
フリーロケーションは、スペースの効率化と作業効率の向上が求められる場合に力を発揮します。特に食品やアパレル業界などで、多品目商品やロットごとの管理が求められるケースではその柔軟性が大きなメリットとなります。ただし、システム運用の精度や作業者の熟練度が成功の鍵を握ります。
これらの比較を基に、自社の倉庫運営に最も適した方法を選択することが、物流効率の向上に直結します。
どちらを選ぶべきか?
固定ロケーションとフリーロケーションのどちらを選ぶべきかは、倉庫運営の目的や取り扱い商品の特性によります。それぞれの特徴とメリット・デメリットを踏まえ、自社に最適な選択肢を見極めることが重要です。
固定ロケーションは、在庫切れの可視化が重要な場合や、取り扱い商品の種類が少なく動きが安定している場合に適しています。例えば、定番商品やロット管理が不要な商品では、この管理方法がシンプルかつ効率的です。
一方、フリーロケーションは、多品目商品の管理や保管スペースの効率化が求められる場合に適しています。食品やアパレル業界のように、商品の入れ替えが頻繁に発生する場合や、消費期限やロットごとの管理が必要な場合に特に有効です。
さらに、倉庫管理システム(WMS)の導入状況も選択の重要な要素です。固定ロケーションはシステム依存度が低い一方、フリーロケーションを効果的に運用するにはWMSなどのシステムの依存度高くなります。システム導入が進んでいる倉庫ではフリーロケーションの柔軟性を最大限に活用できるでしょう。
最終的には、以下のようなポイントを基準に選択を検討すると良いでしょう
商品の特性:商品が定番品か多品目か
倉庫のスペース:保管スペースに余裕があるか
システム導入状況:WMSや設備の有無
運用の柔軟性:季節変動や商品入れ替えへの対応力
必要に応じて両者を組み合わせて使用することで、効率的な倉庫管理を実現することも可能です。
まとめ
固定ロケーションとフリーロケーションは、それぞれに異なる特性を持つロケーション管理の方法です。固定ロケーションはシンプルで分かりやすい反面、スペース効率の面で課題があります。一方、フリーロケーションは柔軟性が高く、保管スペースの効率化や多品目商品の管理に優れるものの、システム運用の精度が求められます。
どちらを選択するかは、倉庫の規模、商品の特性、運用体制、システム環境などを総合的に考慮する必要があります。また、場合によっては両者を組み合わせることで、それぞれの利点を最大限に活用することが可能です。
適切なロケーション管理方法を選ぶことは、倉庫内の作業効率や保管効率を向上させ、結果として物流全体のパフォーマンス向上につながります。
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次回「フリーロケーションの活用法」に続く、、、
