物流現場の問題点と改善・効率化について
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はじめに
物流の効率化は、倉庫だけを直しても十分ではありません。入荷・在庫・出荷・配送までを一つの流れとして見直すことで、はじめて効果が最大化します。
いま効率化が急がれる背景には、EC拡大による物量の増加と、顧客の「早く、正確に」という期待の定着があります。従来の人員配置や運用のままでは、遅延やムダが起きやすくなりました。
対応の要は、現状を正しく見て、詰まりをほどくことです。たとえば、受注・補充・入荷の時間をずらし、よく出る商品を最短動線へ寄せ、配送はルートと積載率を更新します。小さな改善の積み重ねが、納期とコストを確実に変えます。
同時に、環境への配慮も外せません。排出ガスの削減や共同配送の活用は、コスト低減と企業イメージの向上を両立させます。本記事では、現場で起きやすい問題点を整理し、すぐ試せる打ち手を、解説します。
物流現場のよくある問題点
効率化の出発点は、現場に潜む“問題点”を正しく捉えることです。EC拡大とニーズの多様化で負荷が増え、従来のやり方では遅れやムダが表面化しやすくなりました。ここでは主要な論点を、原因と影響が伝わる形で整理します。
配送業務における問題点
配送の遅延リスクの増加
近年の配送量の増加や繁忙期やセール期に出荷が集中し、固定的な人員配置や締め時刻のままでは処理が追いつきません。遅延は満足度を下げ、返品・再配達・問い合わせ対応を増やし、現場の負担とコストをさらに押し上げます。
配送ルートの効率不足
配達順や立ち寄り条件が最適化されていないままだと、走行距離と待機が増えます。結果として燃料と時間が無駄になり、車両稼働と乗務員の生産性も落ちます。
配送コストの増加
燃料費・車両維持費・人件費の上昇に加え、積載率の低さや共同配送の未活用が響きます。利益率を圧迫し、品質や価格の見直しを迫られる要因になります。
倉庫内の在庫管理と連携の問題
在庫の過不足管理
需要予測のズレや入出庫タイミングの不一致、棚卸差が過不足を生みます。過剰在庫は保管費と滞留を増やし、在庫不足は欠品や機会損失を招きます。根底には、実在庫とデータの不一致があります。
リアルタイムな在庫情報共有の欠如
在庫情報がリアルタイムで更新されていないと、販売部門や他の拠点との情報共有がスムーズに進みません。特に、倉庫が複数ある場合、在庫状況の把握が難しく、必要な商品がどこに保管されているのか確認するのに手間がかかります。必要な時にすぐに対応できず、配送や出荷のスピードが低下します。
荷主や他企業との調整における問題
配送先の調整にかかる時間と手間
共同配送を行う際、配送スケジュールの調整や荷物の配分でトラブルが発生することが多く見られます。荷主ごとに異なる要求や配送時間の調整が必要になると、スケジュールの組み換えに時間を要するため、効率的に配送するのが難しくなります。また、配送先の要望に合わせたスケジュール調整は、特に繁忙期には対応が難しくなり、配送全体に遅れが発生する可能性が高まります。
異なるシステムとの連携不足
荷主や他企業とシステムを連携していない場合、情報の共有に時間がかかることがあります。たとえば、出荷情報の受け渡しや、出荷先の在庫状況の確認が手動で行われると、その都度確認作業が発生します。特に異なるシステム間でのデータの連携がうまくいっていないと、データの一貫性が保てず、作業に余分な負担がかかります。
人手不足と環境負荷に関する問題
慢性的な人手不足と従業員の負担増加
ドライバーや倉庫作業員の採用難に、教育の属人化が重なります。長時間労働と疲労がミスと離職を招き、生産性の低下が連鎖します。
環境負荷の増加
過剰走行や低い積載率、過剰包装や再配達がCO₂と廃棄物を押し上げます。コストだけでなく、企業の持続可能性への評価も下げます。
これらの課題は互いに絡み合い、全体の効率を削ります。まずはどこで遅れ・ムダ・不一致が生じているかを可視化し、影響の大きい箇所から手を入れることが、最短で効く一歩です。
問題点の改善策
効率化は、個別最適ではなく全体最適で進めると効果が大きくなります。配送、在庫、連携、人的リソース、環境の各面で「見える化→標準化→平準化→最適配置→自動化」の順に手を打つのが近道です。
配送業務における改善策
配送ルートの最適化
ルートの最適化はシステムで自動計算し、渋滞や時間指定を踏まえて日々更新します。実績に基づく配達順の見直しで、距離と待機を減らし、燃料と時間を同時に削減します。
配送車両の積載率向上
複数の荷主からの荷物をまとめて配送する「コンソリデーション」で積載率を上げ、配送回数を抑えます。定期便は毎回の積載率をチェックし、積載が薄い曜日や時間帯は積み合わせや発時間の調整で埋めます。
配送進捗のリアルタイム管理
リアルタイムでの配送追跡システムを導入することで、配送の進捗が簡単に確認できるようになります。顧客側が追跡情報を確認できると、配送遅延や到着予定に関する問い合わせが減り、顧客満足度の向上が期待できます。また、配送現場でも進捗状況が把握できるため、トラブル発生時の対応が迅速に行え、現場全体の作業効率が向上します。
在庫管理と情報共有の改善策
在庫の可視化と自動管理システムの導入
RFIDやバーコードを用いた自動管理システムを導入することで、リアルタイムに在庫の数や保管場所が把握でき、誤出荷や欠品を防ぐことができます。システム上で在庫数が即時更新されるため、他部門との情報共有もスムーズに進み、物流現場全体の効率化につながります。
需要予測に基づいた在庫補充の調整
過過剰在庫や欠品を防ぐためには、過去の販売データや需要予測を基にした在庫管理が効果的です。AIやビッグデータ分析を活用して、需要の変動に応じた在庫補充ができるように調整することで、在庫数を最適化し、保管コストを抑えられます。特に、季節ごとに販売が増減する商品や、セール時に需要が急増する商品の補充計画を立てることが、在庫管理の改善に役立ちます。
在庫情報のリアルタイム共有
複数の拠点や販売チャネルがある場合、在庫情報をリアルタイムで共有するシステムが不可欠です。各拠点で在庫数や商品状況が把握できると、必要な商品の調達や移送が効率的に行われます。これにより、欠品による販売機会の損失を防ぎ、特に緊急の受注時には、各拠点の在庫状況が即座に確認できるため、スピーディな対応が実現します。
荷主や他企業との調整における改善策
共同配送スケジュールの最適化
締め時刻と納品条件を可能な範囲で共通化し、時間帯とルートを共有します。無駄な配送やスケジュールの変更が減り、共同便の安定稼働でコストを平準化します。
システム連携によるデータ共有の自動化
異なるシステム同士が円滑にデータを共有できるよう、APIなどを活用してシステムを連携させることが有効です。出荷情報や配送先の在庫情報が自動でシステム間に反映されると、手動での入力が減少し、ヒューマンエラーも防ぐことができます。また、情報の一貫性が保たれ、荷主や配送業者の間でスムーズに情報が共有されるため、物流業務の全体効率が向上します。
人手不足と環境負荷への対応策
自動化技術の導入と業務負担の軽減
ピッキング支援、仕分け機、AGVなどから段階導入し、重い・遠い・繰り返す作業を機械に任せます。人は例外処理と品質確認に集中し、同じ人数で多くの処理量をこなします。
労働環境の改善とスタッフ教育
作業効率を高めるだけでなく、作業環境の整備やスタッフ教育も人手不足の解消に役立ちます。スキルアップ研修や効率的な作業手順の指導を行うことで、作業精度が向上し、現場の負担が軽減されます。また、定期的な休憩や労働環境の見直しを行い、作業者の健康維持をサポートすることで、離職率の低下にもつながり、安定した労働力を確保することができます。
環境負荷を抑えるエコ物流の推進
積載率の向上と共同配送で走行を減らし、車両は低燃費・EVへ計画的に切替えます。過剰包装を改め、再利用材を採用し、排出と廃棄の両方を継続的に下げます。
以上を「見える化→標準化→平準化→最適配置→自動化」の順で重ねると、遅延とコストを同時に削り、顧客満足と環境配慮を両立できます。小さく始め、実績で次の一手を決める運用が定着の近道です。
物流現場を効率化するためには
物流の効率化を進めるには、部分的な改善ではなく全体を見渡す戦略が必要です。配送・在庫・人員・環境・テクノロジーの5つを連動させることで、コスト削減と品質向上を同時に実現できます。
配送の効率化を図る
AIによるルート最適化
AIが渋滞や時間指定を考慮して最短経路を自動で算出します。走行距離と燃料を減らし、配送時間を短縮。リアルタイム調整により遅延リスクも抑えられます。
配送拠点の再配置
需要が集中する地域に小型拠点を置くと、出荷が顧客に近づきます。拠点間で在庫と出荷情報を共有すれば、短距離配送と連携強化が同時に進みます。
在庫管理とシステム導入を進める
ロケーション管理システムの導入
倉庫内でのロケーション管理が欠かせません。バーコードやRFIDによって在庫の保管場所をシステム化すると、ピッキング作業や商品検索がスムーズに進みます。さらに、在庫移動もリアルタイムで把握できるため、正確な在庫管理が実現し、欠品や過剰在庫のリスクが抑えられます。
自動倉庫とAGVによる省人化
自動倉庫や無人搬送車(AGV)を導入すれば、入出庫作業が自動化され、人的ミスが減少します。大型倉庫ほど効果が高く、同じ人数で多くの処理をこなせます。
AIによる需要予測と在庫補充
販売データと季節変動を分析して在庫を自動補充。需要に応じた在庫量を維持し、保管コストと欠品リスクを同時に抑えます。
コスト削減と環境配慮を両立する
積載率の向上と共同配送
複数荷主の共同配送でトラック1台あたりの積載率を上げます。便数を減らして燃料と人件費を削減し、CO₂排出も抑制します。
環境配慮型の梱包材を採用
再利用・再生素材の梱包資材を採用し、廃棄量を減らします。エコ包装は環境だけでなく、企業の信頼やブランド価値も高めます。
燃費効率の高い車両への切り替え
燃費の良い車両やEVを導入すれば、燃料費とCO₂排出を同時に削減できます。環境規制への対応とコスト対策を両立する有効策です。
労働力を確保し教育体制を整える
作業手順の標準化とマニュアル整備
作業を標準化し、写真付きマニュアルで共有すれば新人も短期間で戦力化。属人化を防ぎ、繁忙期でも作業が安定します。
スキルアップとモチベーション向上
定期的な研修と評価制度で作業精度を高め、成長を実感できる環境を作ります。職場環境を改善することで、離職率も下がります。
最新技術を活用した効率化
IoTによる設備と在庫の一元管理
IoTで倉庫内の温湿度や設備稼働を常時監視し、異常を早期に検知。品質維持と安定稼働を両立できます。
AIによる需要予測と在庫最適化
AIが消費動向を分析し、余剰在庫と欠品を防ぎます。データに基づく計画で倉庫スペースを有効活用し、在庫コストを削減します。
物流の効率化は、個別施策を組み合わせて循環させることが鍵です。配送・在庫・人・環境・技術を連動させることで、持続的なコスト削減と品質向上が実現します。
まとめ
物流の効率化は、納期・品質・コストを同時に引き上げるための土台です。部分最適ではなく、入荷から在庫、出荷、配送までを一つの流れとして捉え、見える化→標準化→平準化→最適配置→自動化の順で整えることが近道になります。
配送は、AIによるルート最適化と積載率の改善でムダ走行を減らし、遅延リスクを抑えます。倉庫は、ロケーション管理と自動化で実在庫とデータを一致させ、誤出荷と滞留を防ぎます。需要予測を補充計画に織り込めば、過剰と欠品の振れ幅を小さくできます。
さらに、環境への配慮も物流の重要なテーマです。燃料効率の良い車両や電動車両の導入、再利用可能な梱包資材の使用など、エコ物流の推進により、持続可能な物流体制の構築が可能になります。そして、人材確保と作業者の教育も欠かせない要素であり、作業の標準化やマニュアル整備、スキルアップ研修を通じて現場の安定した労働力を支え、効率化を推進する基盤が整います。
物流現場の改善は、単に作業効率を高めるだけでなく、コスト削減や顧客満足度の向上にもつながります。弊社トミーズコーポレーションでは、これまでに培ったノウハウを活かし、アパレル物流を中心に様々な業界のお客様の物流改善を支援してまいりました。物流現場の改善に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
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