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TOPコラム物流改善事例の近年の傾向と具体策の紹介

公開日: 2023/09/02

物流改善事例の近年の傾向と具体策の紹介

近年の物流改善の事例に見られる傾向と特徴

物流の活動領域は保管、荷役、流通加工など6つの分野があり、これまでの改善対象は倉庫内での作業工程、レイアウト、配送などそれぞれの活動を対象にしていました。近年はそれぞれの活動をつないだシステムを対象とすることが多くなってきており、いわゆるロジスティクスの実践が主流となってきています。その際は改善する手段や技術を取り入れるために、情報活動が大変重要な要素となります。
改善というと現場からのボトムアップから生まれるイメージが強いものですが、近年はトップダウンによる上からの指令、または中堅組織からのアップダウンのような進め方の事例も見られます。企業の経営理念や戦略に基づくもので、企業におけるロジスティクスの重要性が高まっていることの表れです。経営幹部層にその認識が広まっており、好ましい傾向ですが、それと同時に現場への周知徹底や、現場からのボトムアップによるアイデアの採用なども必要なこととなっています。
近年の事例では大手自動車会社による生産方式をモデルにした例、製品の価値を最大化するバリューエンジニアリングなどの技術を活かす例が増えています。ただし、これらの科学的な手法や技術を表面的に理解して実践しようとしても、本当の意味で物流改善することは難しいです。大手自動車会社による生産方式のモデル化は、上手く応用すれば、成果を得られる可能性は確かにあります。しかし、その会社が経営理念や価値観に基づき、独自に生み出した科学的な手法は、企業活動の強さを支えているポリシーを理解、体得、実践することが求められます。

物流コスト事情の変化

2014年から一貫して配送運賃は上昇傾向にあり、配送ドライバーのなり手不足が影響しているため、配送可能なトラックの台数も減少傾向にあります。その結果、配送運賃が値上げされ、上昇傾向に歯止めのかかる見込みがありません。配送ドライバーのなり手が少ないのは、給料が安いこと、大型免許などが必要なこと、勤務時間が不規則なことなどが原因です。他には長距離トラックのドライバーは泊りがけ勤務になること、キツイ、汚い、危険の3K職場であることが理由に挙げられます。この状況が改善されない限り、配送可能なトラックの台数が増えることはありませんし、配送運賃の上昇傾向に歯止めがかかることは困難です。
また、倉庫で作業するスタッフの人件費も上昇傾向にあります。2011年から景気上昇に合わせ、接客や販売など他の業界で求人活動が活発になり、物流業界の求人が敬遠され始めています。求人広告を出しても応募者が集まらないため、時給を上げて給与待遇を良くする必要がありますが、既存のスタッフの時給を据え置くことはできません。そのため時給を上げずに派遣業者にスタッフの求人を依頼するという現状があり、さらに人件費が上昇しています。
先に挙げた配送運賃の上昇と、倉庫作業スタッフの人件費の上昇の2つが物流コストを押し上げる大きな要因です。企業によってコストの構造は多少異なりますが、この2つで全体のコストの約6割から8割を占めるとされます。つまり物流コストの上昇傾向はほとんどの企業が抱えている課題です。コスト削減のために、もっとも効果が期待できる取り組みは、倉庫作業の環境改善です。作業能率の向上のため、PDCAサイクルを実践することが必要です。

これからの物流改善の方向性

物流改善のためには顧客を満足させる視点が欠かせません。一方で実際の現場の声としてお客様に満足して頂けることで、従業員の満足そのものを届けられていると実感できるという意見があります。従業員を満足させるという視点は専門家からも指摘があり、従業員を顧客と同じように扱うことの重要性を説いています。従業員が満足している会社では、不満が多い会社に比べ、倍の成果が得られると述べています。これからの物流改善の方向性として、顧客を満足させるだけでなく、従業員の満足度を高める視点が重要になってきます。
また、原材料の供給元や物流業者との連携により、改善効果を上げている事例があります。調達先と共同輸送をすることで、ムダを無くした物流の合理化の取り組みなどです。これからはサプライチェーンの関係者と発注者が連携し、全体をマネジメントして消費者にサービスを提供していく視点が求められます。その他に次世代で注目される物流システムは、グリーンロジスティクスと言われます。
今後は社会やコミュニティに企業が価値を提供することが重要視され、国際社会の基調となっている持続可能な開発の考えに基づいた、新たなシステム設計が求められています。実際の事例ではストレッチフィルムのリサイクルやリユース、新しい配送容器の開発などがあり、環境負荷を抑えた改善活動が始まっています。物流改善のためには日本の製造業の現場で励行されているPDCAサイクルを着実に繰り返すこと、今後も企業と社員が一体となって進化していくことを必然と受け止める心構えが大切です。

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